.表紙 少年 草太と翼竜 烏野 博史 .人物 題目:草太と翼竜 作:烏野博史 【一行テーマ】 誰とでも友情を結べる可能性がある。 【三行ストーリー】 一人でいる事と生物が好きの小学生の草太は竜の卵を拾う。竜のハッピーと触れ合い友情を結び、密猟者からハッピーを守る。 【人 物】 日野草太(10)三年生 ハッピー(0)竜 鮫肌耕平(49)密猟者 牧場優子(10)草太の同級生 日野楓子(38)草太の母 部下A(35)密猟者 教師(55) 部下達 小学生達 .脚本 |
1P | ①竜神山 |
2 | 竜の石碑の前に立つ教師。教師の周り |
3 | 石畳に座っている生徒達。日野草太(1 |
4 | 0)と牧場優子(10)も座っている。 |
5 | 教師「この竜神山竜神遺跡は竜を神様として |
6 | まつっています。みんなも知っての通り、竜 |
7 | は絶滅危惧種で今は見られないのですが、昔 |
8 | はこの山にいたのでしょう。」 |
9 | 石碑には翼竜の絵が刻まれている。 |
10 | 草太はそばのトカゲを追いかけて歩き |
2P | 出す。草太は優子に耳をひっぱられる。 |
2 | 痛がる草太 |
3 | 優子「(ひそひそ声)そんな事ばかりしてい |
4 | たら、あんた独りぼっちになるぞ」 |
5 | 草太「別に良いし。暴力反対」 |
6 | 草太は不愉快そうに優子の手をはがす。 |
7 | 優子「ちょっと待ちなさいよ!」 |
8 | 山のどこかで銃声音がこだまする。 |
9 | 優子「何の音だろ?」 |
10 | 草太は一人、山道を歩いていく。 |
3P | |
2 | ②同・中腹の廃屋 |
3 | 林業の倉庫。建物の周りは雑草が生え |
4 | 放題。しげしげと建物を見る草太。壁 |
5 | 面はパックリと割れて大きな穴。 |
6 | |
7 | ③同・中腹の廃屋・中 |
8 | 割れ目から顔をのぞかせる草太。 |
9 | 小屋の中に天井からの光がさしている。 |
10 | 部屋の中央の地面に藁や小枝が敷き詰 |
4P | まっている。草太は小屋の中に入る。 |
2 | 地面の小枝を踏む草太。草太は辺りを |
3 | 見回しながら中央に歩いていく。 |
4 | 物音。動物の影が地面を走る。天井の |
5 | 穴を見上げる草太、動物の姿はない。 |
6 | 藁の中央にボーリング玉より少し小さ |
7 | な白い卵が埋まっている。 |
8 | 卵に耳をあてる草太。 |
9 | 壁の割れ目から入ってくる優子。 |
10 | 優子「ちょっと! 日野待ちなさいよーー」 |
5P | 草太の眼前に降り立つ竜。四本の脚に |
2 | 大きな翼。4mの巨体。竜の咆哮。 |
3 | 草太「(叫び声)」 |
4 | 優子「(叫び声)」 |
5 | 壁の穴からかけはいり猟銃を構える鮫 |
6 | 肌耕平(49)と部下Aと部下達、次々 |
7 | と発砲。 |
8 | 鮫肌達に向かって突進する竜。 |
9 | 体を伏せてかわす鮫肌と部下A。 |
10 | しっぽを振るう竜。部下達の内、数人 |
6P | がしっぽでたたきつけられる。 |
2 | 鮫肌「何やってるんだ。撃て!」 |
3 | 鮫肌、竜を撃つ。部下Aと部下達も銃 |
4 | 弾を撃つ。 |
5 | 銃弾が竜の体にささる。苦しみながら |
6 | 屋外の空に飛びあがる竜、翼の動きを |
7 | 止めて落下。うなり声をあげてうずく |
8 | まる竜。そっと竜を伺い見る部下A。 |
9 | 部下A「すごいですね」 |
10 | 鮫肌「竜が嫌う植物の成分をつめた麻酔銃だ。 |
7P | 苦労して見つけた。運搬車に運べ」 |
2 | 竜が暴れて、空に飛び立つ。 |
3 | 部下A「逃げられました!」 |
4 | 鮫肌「何しているんだ! 何日もかけてやっ |
5 | とここまで追いつめたのに」 |
6 | 鮫肌はあたりを伺う。 |
7 | 鮫肌「奴はなんでこんな所に・・・・・・」 |
8 | 鮫肌、草太のほうに向き直る。 |
9 | 緊張した面もちの草太。 |
10 | 鮫肌「君たちは何でここにいる」 |
8P | 優子「わ、私たちは遠足、で」 |
2 | じっと草太を見つめる鮫肌。 |
3 | 鮫肌「なるほど。無事でよかったね」 |
4 | 優子「あ、はい、ありがとうございます」 |
5 | 草太「・・・・・・今の竜だろ。おじさん、 |
6 | 何してるんだよ。」 |
7 | じろりと草太を見る鮫肌。 |
8 | 気圧される草太。 |
9 | 鮫肌「・・・・・・竜は希少だからね。竜の |
10 | 出没するこの森を調べていたんだ」 |
9P | 草太「調べる? でも今の」 |
2 | 鮫肌「(たからかに笑い)人に危害を加えよ |
3 | うとしたからだよ。それに、あれでは竜は死 |
4 | なない!」 |
5 | 草太「・・・・・・ふーん」 |
6 | 鮫肌、笑顔。 |
7 | 鮫肌「道を教えよう。今見たことは秘密だよ」 |
8 | 優子「はい」 |
9 | 草太「道はわかりますから」 |
10 | 草太、リュックサックを背負いなおし |
10P | て、割れ目からでていく。 |
2 | 優子「失礼しました」 |
3 | 追いかける優子。 |
4 | 鮫肌は注意深く辺りを見回す。 |
5 | 地面のわらや木の枝をつまみあげる。 |
6 | 眉をひそめる鮫肌。 |
7 | 藁の上の帽子に草太の名前と住所。 |
8 | |
9 | ④日野家・前(夕) |
10 | 田舎のぽつんとした一軒家。 |
11P | 〝日野〟の表札。 |
2 | 草太の声「ただいま」 |
3 | |
4 | ⑤同・草太の部屋(夕) |
5 | リュックサックを背負った草太と日野 |
6 | 楓子(38)が後ろから入ってくる。 |
7 | 楓子「ちゃんと手を洗いなさい!」 |
8 | 草太「わかったから、あっちいっててよ」 |
9 | 草太、楓子を部屋の外においやる。 |
10 | 草太はリュックサックをおろす。 |
12P | リュックサックから卵を取り出す草太。 |
2 | 床においた卵をじっと見つめる草太。 |
3 | 草太「きっとこれは竜の卵だ」 |
4 | 興奮した様子の草太、あたりを見回す。 |
5 | 押し入れの中から毛布を取り出して卵 |
6 | の下をくるむ。かたかたと震える卵。 |
7 | 草太、卵に耳をぴったりとつけて目を |
8 | つぶる。 |
9 | 草太「(つぶやくように)やっぱり生きてい |
10 | るんだ・・・・・・よぉし!」 |
13P | 押し入れからどんどん布団や衣類を引 |
2 | き出す草太。 |
3 | |
4 | ⑥同・前(早朝) |
5 | 空に月の光が輝いている。 |
6 | |
7 | ⑦同・草太の部屋(早朝) |
8 | 窓から月の光が差し込んでいる。 |
9 | 床に敷かれた布団。布団の上でパジャ |
10 | マ姿の草太があぐらをかき、うつらう |
14P | つらとしている。草太の足の上には卵。 |
2 | 卵は服を着せられていて、下のほうに |
3 | は毛布が巻き付けられている。 |
4 | 目をさまし、目をこすり立ち上がる。 |
5 | 卵がこける。こけた卵をおこす草太。 |
6 | 草太、眠た気によろよろとドアのほう |
7 | に向かう。再び卵がこける。 |
8 | 怪訝な顔をして振り返る草太。 |
9 | グラグラとゆれる卵。卵に亀裂が入る。 |
10 | 草太、目を見開き慌てて卵に這い寄る。 |
15P | 卵の殻の一部に穴があく。中の生物が |
2 | 穴を広げる。亀裂は徐々に大きくなり、 |
3 | ついに卵の殻は二つに裂ける。 |
4 | 草太の顔に驚きが広がる。 |
5 | 月の光が小さな生物が殻から這いだす |
6 | のを照らす。四本の手足に一対の小さ |
7 | な翼を持つ、15cmほどの小さな竜。竜 |
8 | は瞼を開きクリクリした黒い目玉で草 |
9 | 太を見つめる。甲高い鳴き声をあげて |
10 | 草太に歩みよる竜。 |
16P | 口をあんぐりと開けている草太。 |
2 | 草太「お前、竜なのかい」 |
3 | 竜は鳴き声をあげ、草太の指に触れる。 |
4 | 草太「やっぱりそうなんだ!」 |
5 | うれしそうに竜をのぞきこむ草太。 |
6 | 草太「お前に名前をつけてあげる。そうだな |
7 | ・・・・・・ハッピーはどう?」 |
8 | 竜はうれしそうに鳴く。 |
9 | 草太「そうか。ハッピー! 今日からお前は |
10 | ハッピーだ!」 |
17P | ハッピーを高く持ち上げる草太。草太 |
2 | はうれしそうにハッピーに頬ずり。 |
3 | 草太「僕がお前を大きくしてやるからな」 |
4 | 草太の頬をペロペロとなめるハッピー。 |
5 | |
6 | ⑧日野家・前(朝) |
7 | |
8 | ⑨同・草太の部屋(朝) |
9 | 布団や衣類でちらかっている。押し入 |
10 | れのそばの段ボール箱にハッピー。ハ |
18P | ッピーを見つめている草太。草太の脇 |
2 | にはホットミルクの皿と目玉焼きの皿。 |
3 | ハッピーは羽をバタつかせて草太のほ |
4 | うに行こうとするが飛べないので、段 |
5 | ボール箱の壁をずり落ちる。 |
6 | 草太「ハッピーは何をたべたい」 |
7 | ハッピーは首をかしげる。 |
8 | ミルクをいれた皿を箱に入れる草太。 |
9 | ハッピーはミルクをなめる。 |
10 | 目玉焼きをたべようとする草太に鳴き |
19P | 声をあげるハッピー。 |
2 | 皿から落とした目玉焼きをキャッチし |
3 | てムシャムシャと食べるハッピー。 |
4 | 草太「何でも食べるんだな。色々持って来た |
5 | けど、大丈夫そうだなちょっと待ってて」 |
6 | 驚く草太。部屋を出て帰ってくる草太。 |
7 | 側の床にはリンゴやバナナやキャベツ、 |
8 | 牛肉のパックを置く。 |
9 | ハッピーは食べ物をもぐもぐと食べて、 |
10 | どんどんお腹が膨らむ。 |
20P | 草太は満足気な顔。 |
2 | 楓子の声「草太!」 |
3 | 草太は驚いてドアのほうを見る。 |
4 | 楓子がドアを開ける。 |
5 | 楓子「何散らかしてるの!」 |
6 | 草太「片づけるつもりだったんだよ」 |
7 | 楓子「学校におくれるわよ」 |
8 | 楓子が去ると、押し入れをあける草太。 |
9 | 草太「すぐ帰ってくるからね」 |
10 | 草太、押し入れをしめると、ランドセ |
21P | ルを背負って部屋を出て行く。 |
2 | |
3 | ⑩道 |
4 | 遠くで学校のチャイムの音が聞こえる。 |
5 | ランドセルを背負った草太が慌てて家 |
6 | の方に走る。 |
7 | ランドセルを背負った優子が草太を追 |
8 | いかけてくる。 |
9 | 優子「待ちなよ! 日野! あんた遠足の時、 |
10 | 何か隠していたでしょ」 |
22P | 草太「隠してない!」 |
2 | 優子「だから、ちょっと待ちなよ!」 |
3 | 優子を見て必死に逃げる草太。角を曲 |
4 | がりゴミ置き場に隠れる草太。 |
5 | 優子は走りさる。草太は優子とは逆方 |
6 | 向に走っていく。 |
7 | |
8 | ⑪日野家・前 |
9 | 辺りの様子を伺いながら、ポケットか |
10 | ら鍵を取り出して、家に入る草太。 |
23P | |
2 | ⑫同・草太の部屋 |
3 | ランドセルをおろしながら、笑顔でド |
4 | アをあける草太。 |
5 | 草太「ハッピー!」 |
6 | 草太、驚愕の表情。 |
7 | 部屋が散らかっている。押し入れのふ |
8 | すまがはずれている。 |
9 | 部屋の襖の中のものや棚のものが倒れ |
10 | ている部屋の中央で草太の教科書にか |
24P | ぶりついているハッピー。 |
2 | 草太「僕の教科書だよ! 食べ物じゃない」 |
3 | 草太、教科書を引っ張る。 |
4 | 羽をバタつかせるハッピー。ハッピー |
5 | は踏ん張る。教科書が破れる。 |
6 | 草太「うわーっ! 何してるんだよハッピー!」 |
7 | うれしそうに草太を見るハッピー。 |
8 | 草太「これは遊ぶものじゃないだろう」 |
9 | ハッピー、首をかしげる。 |
10 | 草太「もう。片づけろって言われているのに」 |
25P | 草太、ため息をつき、床に散らばった |
2 | ものを拾う。草太の背中をのぼるハッ |
3 | ピー。 |
4 | 草太「ちょっと、ハッピーやめろって!」 |
5 | 拾ったものを落とす草太。草太の肩を |
6 | 左右に移動して、草太の手をかわすハ |
7 | ッピー。倒れる草太、むっとした顔で |
8 | ハッピーから顔をそむける。 |
9 | 首をかしげるハッピー。ハッピーを両 |
10 | 手で抱き抱える草太。 |
26P | 草太「捕まえたぞ! この」 |
2 | 草太、笑う。 |
3 | 玄関のドアが開く音が聞こえる。ドス |
4 | ン、ドスンと足音が近づいてくる。 |
5 | 草太「ハッピーはやく隠れろ!」 |
6 | ハッピーを押し入れに押し込む草太。 |
7 | ドアを開き、じろりと草太を見る楓子。 |
8 | 散らかった中、押し入れの前で寝そべ |
9 | り、ひじをついている草太。 |
10 | 草太「あ、お母さんお帰りーー」 |
27P | じろりと草太を見る楓子。 |
2 | 楓子「片づけなさいっていったでしょ!」 |
3 | 草太「・・・・・・はい」 |
4 | 楓子に気圧されて、転げる草太。 |
5 | |
6 | ⑬川 |
7 | 自転車を止める草太。 |
8 | リュックサックを背負っている草太。 |
9 | 一回り大きくなっているハッピー。 |
10 | 石にすわる草太。 |
28P | 草太「お前のせいで怒られたじゃないか」 |
2 | 何くわぬ顔で川にかけていくハッピー。 |
3 | 草太「お母さんに気づかれたら、うちで飼え |
4 | なくなるぞ」 |
5 | ハッピー、草太を振り返る。 |
6 | 草太「わかっているのか!」 |
7 | 草太はそばにあった木の枝を投げる。 |
8 | ハッピーは木の枝を口でキャッチする。 |
9 | 驚く草太。別の枝を投げる草太。 |
10 | 草太「危なかったんだぞ!」 |
29P | 再びハッピーは木の枝をキャッチ。 |
2 | ハッピー元気よく鳴く。 |
3 | 草太、側にある大きな石に座り、ため |
4 | 息をつく。 |
5 | 川をじっと見ているハッピー。ハッピ |
6 | ーは川に飛び込む。 |
7 | 驚いてハッピーにかけよる草太。 |
8 | 草太「ハッピー!」 |
9 | 勢いよく川から上がってくるハッピー。 |
10 | 草太「え、大丈夫?」 |
30P | ハッピー、口から魚を吐き出す。 |
2 | 草太「えっ、くれるの」 |
3 | 宙返りをして鳴くハッピー。 |
4 | 草太「ハッピーは器用だな」 |
5 | 草太、決心した顔をする。 |
6 | |
7 | ⑭日野家・前(夕) |
8 | 楓子、玄関から出てくる。 |
9 | 楓子「あら、お帰り」 |
10 | 自転車をおした草太がやってくる。草 |
31P | 太、リュックからハッピーを取り出す。 |
2 | 草太「ハッピーです。お母さん。うちでハッ |
3 | ピーを飼って良いでしょ。お願い!」 |
4 | 怖い顔をする楓子。 |
5 | 楓子「何? 駄目よ」 |
6 | 草太「お願い! ハッピーは帰る所がないん |
7 | だよ」 |
8 | 真剣な顔の草太。 |
9 | 楓子「・・・・・・仕方ないわね」 |
10 | 草太「やったー」 |
32P | 嬉しそうにハッピーを抱えあげる草太。 |
2 | ハッピーもつられて鳴く。 |
3 | 楓子「それにしても、ハッピーかわった動物 |
4 | ね。トカゲ・・・・・・犬?」 |
5 | 草太「・・・・・・竜かな」 |
6 | 楓子「竜? ふーん。まぁ、じゃ、ご飯にし |
7 | ましょう」 |
8 | 楓子、家の中に入っていく。 |
9 | 草太、呆然とハッピーを見る。草太を |
10 | なめるハッピー。 |
33P | |
2 | ⑮日野家・前 |
3 | 草太とハッピーが家から出てくる。 |
4 | ハッピーのサイズは大型犬程度になっ |
5 | ており、草太よりも大きい。 |
6 | 鮫肌がたたずんでいる。 |
7 | 鮫肌「君は・・・・・・ひさしぶりだね」 |
8 | にやりと微笑む鮫肌。 |
9 | 鮫肌の手には草太の帽子。 |
10 | 草太、びっくりして後ずさる。 |
34P | 鮫肌に興味を持つハッピーを手で制止 |
2 | する草太。 |
3 | 草太「まて。ハッピー」 |
4 | 鮫肌はハッピーを見る。 |
5 | 鮫肌「そうか。ハッピーと言うのか」 |
6 | 鮫肌。不敵に笑う。 |
7 | 草太「おじさんなんで、ここにいるの?」 |
8 | 眉をひそめる草太。 |
9 | |
10 | ⑯同・居間 |
35P | 庭先で蝶々をおいかけるハッピー。 |
2 | 机を挟んで鮫肌と向き合う楓子と草太。 |
3 | 鮫肌「ハッピー君を私どもに引き取らせて頂 |
4 | けないでしょうか?」 |
5 | 草太、身を乗り出す。 |
6 | 草太「駄目だよ」 |
7 | 楓子「なんで、そんな事を?」 |
8 | 鮫肌「竜は希少な生き物です。どこで産まれ |
9 | どう育つのか、その生体は知られていません。 |
10 | 私どもの施設で研究をさせて欲しい」 |
36P | 草太「駄目だよ。ハッピーは家族なんだ!」 |
2 | 鮫肌「家族? 竜は人とは一緒に住む事はで |
3 | きませんよ。これも竜にやられました」 |
4 | 鮫肌は袖をまくり腕に傷があるのを見 |
5 | せる。 |
6 | 心配そうに楓子を見る草太。 |
7 | 楓子「お引きとりください」 |
8 | 鮫肌「また来ます」 |
9 | 鮫肌、不敵な笑みを浮かべる。 |
10 | |
37P | ⑰森(夕) |
2 | ハッピーと草太が並んで走っている。 |
3 | 翼をはためかせるハッピー、宙に浮く。 |
4 | 草太「ハッピーちょっと待て! うわっ!」 |
5 | 足を木の根っこにひっかけて転びそう |
6 | になる草太。すぐさまハッピーが草太 |
7 | の服を口でつまみ助ける。 |
8 | 草太「ありがとうハッピー」 |
9 | ハッピー、宙返りをする。 |
10 | 笑う草太。 |
38P | 自転車をおしている優子が獣道の先に |
2 | 佇んでいる。目を見開いている優子。 |
3 | 優子「日野、いったい何やってるの?」 |
4 | 草太「なにって、かけっこ」 |
5 | 優子「それ、竜でしょ。なんで?」 |
6 | 草太「卵から育てたんだよ。大丈夫だよ。ね。 |
7 | ハッピー」 |
8 | ハッピー、うれしそうにほえる。 |
9 | 優子「・・・・・・本当に?」 |
10 | 草太「ほら、なでてみなよ」 |
39P | 優子「え? いや、やっぱり危ないって。」 |
2 | 優子、おそるおそるハッピーの額をな |
3 | でる。気持ちよさそうなハッピー。 |
4 | ハッピーの背中にのる草太。 |
5 | 草太「今練習中だけどこんな事もできるんだ。 |
6 | ゴー! ハッピー」 |
7 | 翼をはためかせて浮上するハッピーと |
8 | 草太。得意顔の草太。驚く優子。 |
9 | トンボ見つけておいかけるハッピー。 |
10 | 急な方向転換で落ちる草太。 |
40P | 心配そうにかけよる優子。 |
2 | 優子「大丈夫!?」 |
3 | 草太「いてて」 |
4 | 頭から血を流す草太、足を抑え苦い顔。 |
5 | |
6 | ⑱日野家・前(朝) |
7 | 運搬車の前に立っている鮫肌。草太と |
8 | 楓子が並んで立っている。草太の足と |
9 | 頭には包帯が巻かれている。口にひも |
10 | を結わえられたハッピー。ひもを持っ |
41P | ている部下A。 |
2 | 悲しそうに楓子を伺い見る草太。 |
3 | 草太「こんなのかすり傷だよ」 |
4 | 草太の両肩に手を置く楓子。 |
5 | 楓子「駄目よ」 |
6 | 草太「そんなぁ……」 |
7 | その場でくるくると回るハッピー。悲 |
8 | しそうな声でほえる。 |
9 | 草太「ハッピー」 |
10 | 運搬車の荷台が開き部下Aにつれられ |
42P | てハッピーが荷台の奥に入っていく。 |
2 | にやりとほほえむ鮫肌。 |
3 | 鮫肌「私の言ってた通りになりましたね。」 |
4 | 走り去る運搬車をおいかける草太。 |
5 | 草太「ハッピー!」 |
6 | 草太、肩を落とす。俯く草太。 |
7 | |
8 | ⑲道 |
9 | とぼとぼと歩いている草太。 |
10 | 優子が自転車で通りかかる。 |
43P | 深刻な顔の草太。 |
2 | 優子「大丈夫?」 |
3 | 草太「放っておいてよ」 |
4 | 優子「竜は?」 |
5 | 草太「ハッピーは・・・・・・トラックで遠 |
6 | くに行ってしまった・・・・・・遠足の時の |
7 | あったおじさんに」 |
8 | 優子「えっあのおじさん、なら見かけたよ」 |
9 | 草太、驚いた顔。 |
10 | 優子「トラックにのってたし間違いない。す |
44P | ぐ近くだったよ、あそこなら、最後に一目見 |
2 | るぐらいできるんじゃないかな?」 |
3 | 草太「え?」 |
4 | 草太、うなずく。 |
5 | |
6 | ⑳廃工場・前 |
7 | 河川沿いの廃工場。草太と優子は自転 |
8 | 車でのりいれる。 |
9 | |
10 | ○21同・敷地内 |
45P | 空き地に複数台の運搬車が止まってい |
2 | る。建物には明かりがついている。 |
3 | 草太は屋内にのぞき込む。 |
4 | 鮫肌と部下Aと部下達が食事をとって |
5 | いるのが見える。 |
6 | 部下A「例の薬でおとなしくなりました。本 |
7 | 当に育てるんですか?」 |
8 | 鮫肌「売るに決まっているだろ」 |
9 | 部下A「やっぱり」 |
10 | 鮫肌「ただ、あれだけ、人になれていれば使 |
46P | えるかもしれないな」 |
2 | 部下A「というと?」 |
3 | 鮫肌「竜はごく希に確認されるが、大人の竜 |
4 | ばかりだ。どこかに竜が生まれ育つ場所があ |
5 | るはずだ。仲間の居場所を教えてくれるかも |
6 | しれない。売るのはそれからだ」 |
7 | 部下A「ただでさえ売買は禁止されているの |
8 | に、怖い人だ」 |
9 | 草太と優子、顔を見合わせる。 |
10 | 草太は運搬車のほうにかけよる。 |
47P | 草太「(小声で)ハッピー」 |
2 | 運搬車からハッピーのほえる声が聞こ |
3 | える。草太、人指し指をたてる。 |
4 | 草太「しー、ここから出してやるからな」 |
5 | ハッピーは小さく鳴く。 |
6 | 運搬車のロックを探す草太。 |
7 | 優子の声「(悲鳴)ちょっとやめてよ!」 |
8 | 草太が振り返ると、鮫肌と部下Aと部 |
9 | 下達が建物から出てきている。部下A |
10 | に捕まっている優子。 |
48P | 鮫肌をにらむ草太。 |
2 | 鮫肌「聞かれてしまったか」 |
3 | 部下A「この子はどうしますか?」 |
4 | 鮫肌「騒がれても面倒だな。つれていけ」 |
5 | 部下Aと部下達は草太と優子を運搬車 |
6 | にいれる。 |
7 | 鮫肌「いくぞ。我々は霧の谷に向かう!」 |
8 | 複数の運搬車のエンジンが稼働、工場 |
9 | から出て行く。 |
10 | |
49P | ○22霧の谷の山道(夕) |
2 | ヘッドライトをつけた運搬車A・B・ |
3 | Cが順に走る。他の車はない。山道の |
4 | すぐ脇には濃い霧の深い谷。 |
5 | |
6 | ○23走る運搬車Aの中・荷台(夕) |
7 | 小窓から少し光がはいる。鎖につなが |
8 | れているハッピーを心配そうに見てい |
9 | る草太。草太の横、三角座りで顔をふ |
10 | せている優子。 |
50P | 優子「ちょっと~・・・・・・だしてよ」 |
2 | 優子、床をたたき、すすり泣く。 |
3 | へたっているハッピー、目だけ草太を |
4 | みている。 |
5 | 草太、ハッピーの頭をなでる。 |
6 | 草太「ハッピー。ごめんよ。引き渡してしま |
7 | って・・・・・・」 |
8 | ハッピー、力なくうなる。 |
9 | 草太「元気ないな。あいつに毒の草を使われ |
10 | たのかい」 |
51P | ハッピー、力なく鳴き声をあげる。 |
2 | 草太「ハッピー・・・・・・」 |
3 | 草太、立ち上がる。 |
4 | 草太「ハッピー、僕は友達がいないからさ。 |
5 | うちに来てくれて嬉しかったんだ。一緒に遊 |
6 | んで、一緒においしいごはんを食べてさ」 |
7 | ハッピー、顔をあげる。 |
8 | 草太、後部のドアを両手でおす。 |
9 | 草太「絶対助けてあげるからね。ハッピー」 |
10 | 草太、運搬車の後ろのドアに体当たり。 |
52P | 草太を見て、立ち上がる優子。 |
2 | 優子「わ、私もよ」 |
3 | 草太「ハッピー、ここから出よう! また一 |
4 | 緒に暮らそう!」 |
5 | ハッピー手足の鎖をひっぱり、じりじ |
6 | りと草太のほうに近づいていく。 |
7 | ハッピーにつながれた鎖が次々と切れ |
8 | ていく。おどろく草太。 |
9 | ハッピーは大きな、うなり声をあげる。 |
10 | |
53P | ○24走る運搬車Bの中・運転席(夕) |
2 | 運転している部下A。助手席の鮫肌。 |
3 | 山からうなり声が木霊する。 |
4 | 部下A「前の運搬車。うるさくありません?」 |
5 | 鮫肌「放っておけ」 |
6 | 部下A「霧が濃くなりましたね。まるで夜だ」 |
7 | 鮫肌「霧の谷が近づいてるからな」 |
8 | 道の霧は急激に立ちこめて、どんどん |
9 | 薄暗くなっていく。 |
10 | |
54P | ○25走る運搬車Aの中・荷台(夕) |
2 | 草太と優子、体当たりをする。 |
3 | 草太「(叫び)」 |
4 | ハッピーの鎖がひきちぎれる。 |
5 | 草太の脇を抜けてドアに体当たりをす |
6 | るハッピー。ドアが大きくゆがむ。 |
7 | ドアをのぞきこむ優子。 |
8 | 優子「ハッピーいけるよ!」 |
9 | 草太「いこうハッピー!」 |
10 | ハッピー、もう一度、ドアにアタック。 |
55P | ドアがはずれる。 |
2 | |
3 | ○26霧の谷の山道(夕) |
4 | 運搬車Aの荷台から飛び出す草太とハ |
5 | ッピーと優子。ハッピーはすぐさま草 |
6 | 太と優子を両手、両足でキャッチする |
7 | とそのまま谷側に滑空する。 |
8 | 二人を抱えているので高度がとれずに |
9 | すぐ後ろの運搬車Bに併走してしまう |
10 | ハッピー。 |
56P | 鮫肌「何! どういう事だ! 逃がさないぞ。 |
2 | くそ! なんなんだ! この霧は!」 |
3 | 猟銃を取り出し、ハッピーを狙う鮫肌。 |
4 | 草太「危ないハッピー!」 |
5 | ハッピーは銃弾をかわす。 |
6 | 突風がふく。しばらく続く暴風。 |
7 | ハッピーは上昇気流で上に吹き上げら |
8 | れ、運搬車はふらつき蛇行する。 |
9 | 火花を上げパンクする運搬車のタイヤ。 |
10 | 鮫肌の運搬車が玉突き事故を起こして |
57P | 炎をあげる。 |
2 | 席から身をのりだす鮫肌。 |
3 | 鮫肌「覚えてろよぉ!」 |
4 | 鮫肌と燃え上がる運搬車は小さくなり |
5 | 霧の中に消える。爆発の小さな光。 |
6 | 唖然とする草太と優子。 |
7 | |
8 | ○27大空・竜の島(夕) |
9 | 草太とハッピーと優子は濃い霧を抜ける。 |
10 | 優子「見て」 |
58P | 霧の中にぽっかり島が浮いている。明 |
2 | るい夕日と竜達の群れが飛んでいる。 |
3 | ハッピー、草太と優子をすぐ下の地面 |
4 | におろす。 |
5 | 草太「……霧の中にこんな所があるなんて」 |
6 | 優子「でもここ空の上でしょ」 |
7 | ハッピー、元気よくほえる。 |
8 | ハッピーに呼応するようにほえる竜達。 |
9 | 草太「きっと竜達のすみかなんだ」 |
10 | 草太、ハッピーをなでる。 |
59P | 満足そうなハッピー。 |
2 | ハッピーを見て、竜達をながめる草太。 |
3 | 草太「……僕たちも帰らなくちゃ! 僕たち |
4 | を送っていってくれるかい。ハッピー!」 |
5 | ハッピー、宙返りしてほえる。 |
6 | 切なそうに涙を流してハッピーを抱き |
7 | しめる草太。 |
8 | |
9 | ○28日野家・前 |
10 | 草太がかけて出て行く。 |
60P | |
2 | ○29竜神山 |
3 | 野鳥の鳴き声が聞こえる。草太は一人 |
4 | で森の木々、草むらの下などを確認し |
5 | ていく。 |
6 | 優子の声「ちょっと待って!」 |
7 | 息をきらして、登ってくる優子。 |
8 | 優子「私もハッピーみたいな竜が欲しい!」 |
9 | 草太「わかった。じゃ、会いにいこう」 |
10 | 草太と優子は自然の中、山道を上る。 |
61P | |
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